(運送業編)2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されます

2024年4月から建設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師の時間外労働の上限規制が適用されます。
時間外労働の上限規制が適用は2019年4月から実施されていましたが、上記の職種は上限規制を設けることが難しい業種として適用が延期されてきました。2024年4月よりいよいよ適用となります。
今回は運送業(トラック運転)について記載します。

改善基準告示とは

全ての労働者の労働時間の上限は労働基準法によって定められています。ただ、トラック運転業務については、荷待ち、客待ち時間などがあるなど一般労働者とは異なる労働環境にあることから、特例規則である厚生労働省告示(改善基準告示)という他の業種とは異なる基準が設けられていました。

改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことを言い、自動車運転者の長時間労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要であることから、トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、休息期間について基準等が設けられています。

改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた平成9年以降、改正は行われていませんでしたが、令和4年12月に自動車運転者の健康確保等の観点により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間等が改正されました(令和6年4月1日施行)。

なお、自動車運転業務の上限規制が適用されるのは自動車運転業に従事する者に限られます。事務員や運行管理者など自動車運転業務を行わない者は通常の労働時間の上限規制が適用されるのでご注意ください。

具体的な改正の概要と詳細をまとめました。

区分改正前改正後(令和6年4月~)
1日の休息時間連続8時間継続11時間を基本とし、9時間下限
1日の拘束時間原則13時間以下、最長16時間原則13時間以下、最長15時間
(14時間超は週2回までが目安)
1カ月の拘束時間原則:293時間
最大:320時間
原則:284時間
最大:310時間
(1年の拘束時間が3,400時間を超えない範囲で年6回まで)
1年の拘束時間3,516時間原則:3,300時間
1年、1か月の拘束時間

【原則】
1年の拘束時間は3,300時間以内、かつ、1か月の拘束時間は284時間以内

【例外】
・ 労使協定により、1年のうち6か月までは、1年の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、 1か月の拘束時間を310時間まで延長できます。
・ 1か月の拘束時間が284時間を超える月は連続3か月まで。
・ 1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努める必要があります。

1日の拘束時間、1日の休息期間

【原則】
1日(始業時刻から起算して24時間をいう。)の拘束時間は13時間以内とし、これを延長する場合であっても、上限は15時間です。

【例外】宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、1週について2回に限り、1日の拘束時間を16時間まで延長することができます

※1日の拘束時間について13時間を超えて延長する場合は、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める必要があります。回数は1週について2回までが目安です。この場合において、14時間を超える日が連続することは望ましくありません。

1日の休息期間

【原則】
1日の休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはなりません

【例外】
・ 宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、1週について2回に限り、継続8時間以上とすることができます。
・ 休息期間のいずれかが継続9時間を下回る場合は、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えなければなりませ

2日平均1日の運転時間

2日を平均した1日当たり(2日平均1日)の運転時間は、9時間以内です。

2週平均1週の運転時間

2週間を平均した1週間当たり(2週平均1週)の運転時間は、44時間以内です。

連続運転時間

【原則】
・連続運転時間は4時間以内です。
・ 運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に、30分以上の運転の中断が必要です。中断時には、原則として休憩を与えなければなりません。
・ 運転の中断は、1回がおおむね連続10分以上とした上で分割することもできます。ただし、1回が10分未満の運転の中断は、3回以上連続してはいけません。

【例外】
・サービスエリア又はパーキングエリア等が満車である等により駐車又は停車できず、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、4時間30分まで延長することができます

予期し得ない事象への対応時間の取扱い

・ トラック運転者が、災害や事故等の通常予期し得ない事象に遭遇し、運行が遅延した場合、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から、予期し得ない事象への対応時間を除くことができます。・ この場合、勤務終了後、通常どおりの休息期間(継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない)を与えることが必要です。

残業時間を減らす取り組み

人手不足のなか、残業時間が大幅に規制されるため、残業時間を減らす取り組みが必要です。
会社の状況や方針によって選択肢は変わると思いますので、一般的な方法をいくつかご紹介いたします。

効率的なスケジューリングとルーティング

運送業務のスケジュールを最適化し、ドライバーの労働時間を最適に活用することが重要です。効率的なルーティングソフトウェアやテクノロジーを活用して、最短経路や交通状況を考慮した配送計画を立てることができます。

自動化と技術の活用

自動化技術やIoT(モノのインターネット)デバイスを活用して、業務の効率化とドライバーの負担軽減を図ることができます。例えば、車両のトラッキングや配送状況のリアルタイムモニタリング、自動運転技術の導入などが挙げられます。

ドライバーのトレーニングと教育

ドライバーに対して、効率的な運転技術や安全運転の重要性についてのトレーニングを提供することで、作業時間の最適化や事故リスクの低減を図ることができます。

ワークロードのバランス

ドライバーのワークロードを適切にバランスさせることが重要です。長時間の運転や連続しての過酷な業務は、疲労やストレスを引き起こし、事故リスクを高める可能性があります。定期的な休憩や休暇の計画、シフトの調整などを通じて、ドライバーの健康と安全を考慮したワークスケジュールを策定することが重要です。

データ分析と改善策の実施

運送業務におけるデータを収集し、分析することで、作業時間の無駄を特定し、改善策を導入することができます。例えば、配送ルートの最適化や作業プロセスの改善などが挙げられます。

AIを活用したルーティングなど、物流業界においてもICTを活用することで事業の成長が加速できます。
ICTの導入についてはIT導入補助金などの補助金や助成金の活用で投資額を抑えることも可能ですので、ご検討の際には是非当事務所にご相談ください。

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