労働安全衛生法の改正により、2025年5月に労働安全衛生法が改正され、従業員50人未満の中小企業でもストレスチェックが義務化されることが決まりました。この改正は、公布後3年以内に施行される予定です。
本制度は、メンタルヘルス不調の未然防止を目的として導入されたものであり、一定規模以上の事業場においては、単なる努力義務ではなく、法令遵守の観点からも確実な対応が求められる重要な制度となっています。
ストレスチェックとは
ストレスチェック制度が導入された背景には、職場におけるメンタルヘルス不調の深刻化があります。
長時間労働や人間関係の複雑化、業務の高度化などを背景に、うつ病などの精神障害を理由とする労災請求件数は年々増加傾向にあり、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が強く認識されるようになりました。

「ストレスチェック」とは、労働者がストレスに関する質問票に回答し、その結果を集計・分析することにより、自身の心理的負担の状態を客観的に把握するための簡易な検査制度です。
これまで本制度は、常時使用する労働者が50人以上の事業場において実施が義務付けられていましたが、制度の見直しにより、今後は50人未満の事業場についてもストレスチェックの実施が求められる予定となっています。
ストレスチェックの対象者
ストレスチェックの対象者は、以下の要件を満たす事業場に常時使用される労働者です。
- 期間の定めのない労働契約で雇用されている労働者のほか、1年以上継続して雇用されている者、または今後1年以上の雇用が見込まれる者
- 1週間の労働時間数が当該事業場において、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
上記の要件を満たす場合は、契約社員やパート、アルバイトであってもストレスチェックの対象者となります。
ストレスチェックの実施頻度
ストレスチェックは、少なくとも年に1回、定期的に実施することが労働安全衛生法で定められています。
この「年1回以上」という頻度は最低限の基準であり、事業者は労働者の心理的負担の状況を継続的に把握するため、毎年同じ時期に実施することが望ましいとされています。
高ストレスと判定された従業員がいた場合の対応
ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員がいた場合でも、事業者が一方的に面談や治療を強制することはできません。
高ストレスと判定された労働者から申出があった場合、事業者は次の対応を行う義務があります。
・医師による面接指導の機会を提供すること
・面接指導の結果を踏まえ、必要に応じて以下のような就業上の措置を検討すること
①労働時間の短縮
②就業場所の変更
③作業転換
なお、面接指導を受けたこと、またその結果を理由として、不利益な取扱いを行うことは禁止されています。
まとめ
現代は、業務の高度化や人間関係の複雑化などを背景に、ストレスを原因として心身の不調を訴え、休職や欠勤に至る労働者が増加している「ストレス社会」といわれています。
こうした状況を踏まえ、今後はストレスチェック制度が、従業員50人未満の事業場においても義務化される予定となっており、これまで以上に多くの企業がメンタルヘルス対策に向き合うことになります。
今回の改正は、制度を単なる負担と捉えるのではなく、職場環境を見直す前向きな機会として活用していくことが重要ではないでしょうか。
