アルバイトやパートタイムといった非正規雇用で働く方の中には、学業や家庭、Wワークとの両立など、日々の予定に合わせて柔軟に休暇を取りたいと考える方が多くいらっしゃいます。特に、シフト調整だけでは対応しきれない事情がある場合や、安定した休息を確保したい場合には、年次有給休暇を活用したいというニーズが高まっています。

しかし一方で、「アルバイトでも有給休暇は取れるのか」「正社員だけが対象なのではないか」といった誤解も根強く、制度の正しい理解が広がっていないのも事実です。では、パート・アルバイトなどの短時間労働者であっても、年次有給休暇を取得することが認められているのでしょうか。
年次有給休暇の比例付与とは
アルバイトやパートタイムで働く方は、勤務時間や出勤日数が人によって大きく異なるうえ、正社員に比べて短時間勤務であるケースが一般的です。こうした労働条件の違いを踏まえ、短時間労働者には勤務日数に応じて年次有給休暇の日数を調整する「比例付与」の制度が設けられています。
年次有給休暇の「比例付与」とは、パートタイム労働者やアルバイトなど、所定労働日数が正社員より少ない短時間労働者に対して、実際の労働日数に応じて付与日数を段階的に定める制度のことをいいます。労働基準法では、所定労働日数が週5日(または年間217日)未満の場合、勤務日数に比例した有給休暇の日数を付与する仕組みを採用しています。
年次有給休暇が付与される要件とは
年次有給休暇が付与されるためには、次の 2つの要件を満たす必要があります。
- 1.6か月以上継続して雇用されていること
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入社日から起算して、6か月間同じ会社で働き続けていることが必要です。
これは、正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトなどの非正規雇用でも同様に適用されます。 - 2.出勤率が80%以上であること
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6か月間の所定労働日に対して、実際に出勤した日が80%以上あることが条件です。
短時間労働者の有給休暇の付与日数は
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数は以下となります。
| 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数(年) | |||||||
| 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | |||
| 付与日数(日) | 4日 | 169日 ~ 216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
| 3日 | 121日 ~ 168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
| 2日 | 73日 ~ 120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | |
| 1日 | 48日 ~ 72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | |
労働時間の適正な管理を
パート・アルバイトといった非正規雇用の従業員であっても、労働基準法に基づき年次有給休暇を付与することは企業の義務です。しかし現実には、短時間労働者の勤怠管理が十分に行われておらず、実際の労働時間や出勤実績が正確に把握されていない企業も少なくありません。
有給休暇の適正な付与を行うためには、まず前提となる労働時間や出勤状況を正確に記録・管理する体制を整えることが欠かせません。適切な勤怠管理体制の構築こそが、有給休暇の適正運用に向けた第一歩です。
