
高齢化が進行する現代においては、定年を迎えた高齢者の知識や経験を引き続き活用し、職場における貴重な戦力として位置づけていくことが、企業にとって重要かつ避けては通れない経営課題の一つとなっています。
こうした中、定年後の再雇用に際して有期雇用契約への切り替えを検討する企業も少なくありませんが、その際に留意したい制度に有期契約労働者の無期転換ルールと第二種計画認定申請があります。
有期契約労働者の無期転換ルールとは
有期契約労働者は、その雇用関係が期間によって区切られていることから、契約の更新時に使用者側の判断で契約が終了する可能性があるなど、雇用の安定性という観点から見ると、相対的に立場の弱い労働者であるといえます。
こうした状況に鑑みて、労働者の雇用の安定を図ることを目的として導入されたのが、いわゆる「無期転換ルール」です。
この制度は、下図のように同一の使用者との間で締結された有期労働契約が繰り返し更新され、その通算契約期間が5年を超えた場合において、労働者からの申込みによって期間の定めのない労働契約(いわゆる無期契約)へ転換できるという制度です。
対象となる方は、原則として有期労働契約の契約期間が通算5年を超える全ての方です。契約社員やパート、アルバイトなどの名称は問いません。

無期転換ルールの注意点
有期契約労働者にとって、雇用の安定性を確保するという点で大きな意義を持つ無期転換ルールですが、無期転換ルールを運用する上で留意すべき重要な点がいくつかあります。
まず、就業規則等において無期転換後の労働者に適用される定年の規定が明確に定められていない場合には、労働者が無期契約へ転換した後、定年により自然退職とする取扱いができなくなる可能性があるという点が挙げられます。
たとえば、定年を迎えた後に有期契約で再雇用された労働者が、通算5年を超えて無期転換された場合、その無期契約に対して適用される定年の規定が存在しなければ、使用者側が定年による雇用終了を主張することが困難となり、結果として事実上、定年制が適用されない状況が生じる可能性があります。
無期転換ルールの例外
上記のようにすべての労働者に一律に適用することが適切でない場合も存在するため、無期転換ルールには一定の例外が設けられています。
具体的には、例えば高度な専門的知識や技能を有し、職務の特性上一定期間に限って雇用されることが想定される労働者、あるいは大学・研究開発法人などに所属する研究者や教員等がその対象となります。
そして、こうした例外のひとつとして、定年退職後に引き続き同一事業主のもとで有期契約により再雇用される高年齢労働者も含まれており、一定の要件を満たしたうえで所定の手続きを経ることで、無期転換申込権の適用除外とすることが可能とされています。
有期特措法に基づく第二種計画認定申請
無期転換ルールの例外の項目で記載したとおり、原則として、定年後に引き続き雇用される有期契約労働者についても、無期転換ルールは適用されます。
そこで、事業主が定年後の高年齢労働者に対する雇用管理措置に関する計画(第二種計画)を策定し、当該計画について都道府県労働局長の認定を受けた場合には、その認定計画に基づく有期雇用期間中は、当該労働者に対して無期転換申込権は発生しないものとされます。
なお、第二種計画認定の効力は、無期労働契約で定年を迎えた労働者を定年後に継続雇用する場合が対象となります。 有期労働契約で定年年齢を迎えた労働者や他社(特殊関係事業主を除く)で定年を迎えた労働者は対象となりません。
また、対象となる労働者には、有期労働契約の締結・更新時に、無期転換ルールの特例が適用されていることを書面で明示しなければなりません
まとめ
定年後に有期雇用として再雇用された労働者について無期転換ルールを一律に適用することは、場合によっては高齢者の継続的な雇用を促進する上で支障となる可能性があります。
こうした背景から、一定の条件の下で「第二種計画認定申請」により無期転換ルールの適用除外を認める本制度は、事業主にとっては適切な労務管理を行うための有効な手段であり、同時に労働者にとっても雇用の継続を確保しつつ就業機会を得るという観点から有益な制度であると考えます。
もっとも、この制度を適正に運用するためには、対象となる労働者の十分な理解と協力を得ることが不可欠となります。計画策定にあたっては、関係労働者への事前の意見聴取や制度内容の周知徹底を通じて、透明性と納得性のある対応を図ることが事業主に強く求められます。