「うちはまだ従業員が少ないから、就業規則なんていらないよね?」
日頃、スモールビジネスの経営者様からこのようなご相談をよくお受けします。日々の業務に追われる中、手間のかかるルールの明文化は後回しになりがちですよね。そのお気持ちはとてもよく分かります。
結論から申し上げますと、「法律上は作らなくても罰則はありませんが、会社を守るためには絶対に作っておくべき」というのが社労士としての答えです。
法律上の「10人の壁」の落とし穴
労働基準法では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務付けています。つまり、9人以下であれば作成義務も届出義務もありません。
しかし、ここで一つ注意が必要です。この「10人」には、正社員だけでなく、パートやアルバイトも含みます。「正社員は5人だけど、アルバイトが6人いる」という場合は、合計11人となり、法律上の作成・届出義務が発生しますのでご注意ください。
10人未満でも就業規則を作るべき3つの理由
法的義務がないにもかかわらず、なぜ社労士が作成を強くおすすめするのか。それには経営を左右する重要な理由があります。
- 助成金の申請に必須となることが多い 国が支給する「雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)」の多くは、要件として就業規則の提出を求めています。いざ魅力的な助成金を見つけても、「就業規則がないから申請できない」「今から作っていては期限に間に合わない」という事態は非常にもったいないです。
- 「言った・言わない」の労使トラブルを防ぐ盾になる 残業代の計算方法、有給休暇の取得ルール、退職時の手続きなど、従業員とのトラブルの多くは「ルールの曖昧さ」から生まれます。口約束ではなく、会社の公式ルールとして明文化しておくことで、無用なトラブルを未然に防ぎ、結果的に経営者様の精神的ストレスを大きく軽減できます。
- 問題社員への「懲戒処分」ができない 遅刻を繰り返す、会社の秩序を乱すといった問題行動を起こす社員がいた場合、経営者としては何らかの処分(減給や解雇など)を検討するでしょう。しかし、日本の労働法制では**「就業規則に根拠となる規定がない限り、懲戒処分を行うことはできない」**という大原則があります。いざという時に会社を守る武器がない状態は、大きなリスクです。
まとめ:就業規則は「コスト」ではなく「投資」
法律で義務付けられていないからといって就業規則を作らないことは、いわば「ルールなしでスポーツの試合をするようなもの」です。
最初は簡単なものからでも構いません。「会社のルールブック」を作ることは、従業員に安心感を与え、採用時のアピールポイントにもなります。作成にかかる費用や手間は、将来のトラブル解決費用や助成金受給を考えれば、十分に回収できる「投資」と言えます。
