
働き方改革推進支援助成金とは
労働基準法改正により2020年4月から中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されたことで、従来の長時間労働に依存したビジネスモデルからの転換が企業に求められています。
働き方改革推進支援助成金は、こうした制度環境の変化に対応するため、労働生産性の向上、労働時間の適正化、年次有給休暇取得率の向上等を通じた労働環境の質的改善に取り組む中小企業事業主に対し、必要な設備投資・システム導入費用等の一部を助成することで、構造的な働き方改革の推進を支援する制度となります。
働き方改革推進支援助成金では、「労働時間短縮・年休促進支援コース」、「業種別課題対応コース」、「勤務間インターバル導入コース」、「団体推進コース」の4つのコースが設けられています。
労働時間短縮・年休促進支援コース
労働時間短縮・年休促進支援コースでは、働き方改革の推進に向けて、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の取得促進に向けた環境整備を行うことを目的として、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用機器等の導入等を実施し、改善の成果を上げた事業主に対して、その経費の一部が助成される制度となります。
支給対象となる取組
労働時間短縮・年休促進支援コースでは、下記の取組のうち、いずれか1つ以上実施する必要があります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアなどの導入・更新
- 労務管理用機器などの導入・更新
- デジタル式運行記録計などの導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
※上記1~3の成果目標に加えて、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上5%以上または7%以上引き上げることを成果目標に加えることができます。
成果目標
労働時間短縮・年休促進支援コースでは、以下の1~3の成果目標の中から1つ以上を選択します。
- 月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数の縮減し、①又は②の範囲内で延長する労働時間数の上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと。
①時間外労働と休日労働の合計時間数を月60 時間以下に設定
②時間外労働と休日労働の合計時間数を月60 時間を超え月80 時間以下に設定 - 年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入すること
- 時間単位の年次有給休暇制度と、交付要綱で規定する特別休暇を1つ以上新規導入すること
補助率
補助率:3/4
※事業規模30 名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費の合計が30 万円(税込)を超える場合は4/5
助成上限額
助成上限額は「成果目標」で選択した下記1~3までの助成上限に、下記4の上限額への加算額を合計した金額となります。
1.成果目標1の上限額
事業実施後に設定する時間外労働と休日労働の合計時間数 | 事業実施前の設定時間数 | |
現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月80時間を超えて設定している事業場 | 現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超えて設定している事業場 | |
時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間以下に設定 | 150万円 | 100万円 |
時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超え、月80時間以下に設定 | 50万円 | - |
2.成果目標2の上限額:25万円
3.成果目標2の上限額:25万円
4.成果目標「賃金の引上げ」の上限額の加算
常時使用する労働者数が30人を超える場合に、達成した成果目標の助成上限額に、下記の表の上限額が加算
されます。
引上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
---|---|---|---|---|
3%以上 引上げ | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 1人当たり2万円 (上限60万円) |
5%以上 引上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 (上限240万円) |
7%以上 引上げ | 36万円 | 72万円 | 120万円 | 1人当たり12万円 (上限360万円) |
業種別課題対応コース
業種別課題対応コースは、生産性を向上させ、時間外労働の削減、週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入や医師の働き方改革推進に向けた環境整備に取り組んでいる対象となる業種の中小企業事業主に対して、その経費の一部が助成される制度となります。
対象となる業種
業種別課題対応コースでは、下記のいずれかの業種に該当する事業主が対象となります。
- 建設業
- 運送業等
- 病院等
- 砂糖製造業
- 情報通信業
- 宿泊業
支給対象となる取組
業種別課題対応コースは、以下の取組のうち、いずれか1つ以上を実施する必要があります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアなどの導入・更新
- 労務管理用機器などの導入・更新
- デジタル式運行記録計などの導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
成果目標
業種別課題対応コースでは、以下の1~7の成果目標のうち、いずれか1つ以上を選択します。
- 時間外労働の上限設定【建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業及び宿泊業】
①本成果目標を初めて選択する場合と、②本成果目標の選択が2回目の場合に異なる基準が設けられています。 - 年次有給休暇の計画的付与の導入【建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業及び宿泊業】
- 時間単位の年次有給休暇及び特別休暇の導入【建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業又は宿泊業】
- 勤務間インターバルの導入【建設業、運送業等、病院等、砂糖製造業、情報通信業及び宿泊業】
- 全ての対象事業場において、週休2日制の推進に向けて、定められた範囲内で休日を増加させること。【建設業】
- 医師の働き方改革推進のため、全ての指定対象事業場について、次の①及び②を全て実施すること。【病院等】
- 3直3交代制等の勤務割表を整備すること。【砂糖製造業】
補助率
補助率:3/4
※事業規模30 名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費の合計が30 万円(税込)を超える場合は4/5
助成上限額
助成上限額は、下記1から6までの選択した成果目標の合計額に、賃金引上げの加算額を合算した額となります。
1-1.成果目標1の①達成時の上限額
事業実施後に設定する時間外労働時間数等 | 事業実施前の設定時間数 | |
現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月80時間を超えて設定している事業場 | 現に有効な36協定において、時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超えて設定している事業場 | |
時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間以下に設定 | 250万円 | 200万円 |
時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超え、月80時間以下に設定 | 150万円 | - |
1-2.成果目標1の②達成時の上限額
「時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超え月80時間以下に設定している指定対象事業場」の36協定について、2回目の取組によって月60時間以下に設定した場合は100万円。
また、時間外労働と休日労働の合計時間数を令和6年度に設定した時間数よりも短くすることを目標として2回目の取組を行った場合で、令和6年度に設定した時間数と同数以下に設定した場合は25万円。
2.成果目標2達成時の上限額:25万円
3.成果目標3達成時の上限額:25万円
4.成果目標4達成時の上限額:170万円
5.成果目標5達成時の上限額:1日増加ごとに25万円(最大で100万円まで)
6.成果目標6達成時の上限額:50万円
7.成果目標7達成時の上限額:350万円
勤務間インターバル導入コース
勤務間インターバル導入コースは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るため、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることを目的として、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用機器等の導入等を実施し、改善の成果を上げた事業主に対して、その経費の一部が助成される制度となります。
支給対象となる取組
勤務間インターバルコースでは、下記の取組のうち、いずれか1つ以上実施する必要があります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアなどの導入・更新
- 労務管理用機器などの導入・更新
- デジタル式運行記録計などの導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
成果目標の設定
勤務間インターバルコースでは、事業主が事業実施計画において指定した各事業場において、以下のいずれかに取り組む必要があります。
取組む内容 | |
---|---|
新規導入 | 勤務間インターバルを導入していない事業場において、事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とする、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を労働協約または就業規則に定めること |
適用範囲の拡大 | 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下であるものについて、対象となる労働者の範囲を拡大し、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とすることを労働協約または就業規則に規定すること |
時間延長 | 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、当該休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすることを労働協約または就業規則に規定すること |
補助率
補助率:3/4
※事業規模30 名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費の合計が30 万円(税込)を超える場合は4/5
助成上限額
休息時間数 | 「新規導入」に該当する取組がある場合 | 「新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合 |
11時間未満 | 9時間以上100万円 | 50万円 |
11時間以上定 | 120万円 | 60万円 |
※賃金額の引上げを成果目標に加えた場合に加算額あり
団体推進コース
団体推進コースでは、中小企業事業主の団体や、その連合団体が、その傘下の事業主のうち、労働者を雇用する事業主の労働者の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取組を実施した場合に、その事業主団体等に対して助成する制度です。
支給対象となる取組
団体推進コースでは、以下の1~10の中で1つ以上実施する必要があります。
- 市場調査の事業
- 新ビジネスモデル開発、実験の事業
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
- 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
- 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
- 好事例の収集、普及啓発の事業
- セミナーの開催等の事業
- 巡回指導、相談窓口設置等の事業
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取組の事業
成果目標
団体推進コースの成果目標は、支給対象となる取組内容について、事業主団体等が事業実施計画で定める時間外労働の削減又は賃金引上げに向けた改善事業の取組を行い、構成事業主の2分の1以上に対してその取組又は取組結果を活用することとなっています。
助成額
団体推進コースの助成額は、成果目標を達した場合に、助成対象となる取組の実施に要した経費のうち、以下①~③のいずれか低い方の額となります。
①対象経費の合計額
②総事業費から収入額を控除した額
③上限額500万円
まとめ
少子高齢化による労働力不足と労働法制の変化が進む中で、働き方改革による生産性向上は、中小企業にとって避けて通れない経営課題となっています。特に限られた予算と人材で運営される中小企業においては、政府の助成制度を効果的に活用することで、設備投資やシステム導入の負担を軽減しながら、段階的な改革を実現することが現実的なアプローチといえます。
働き方改革推進支援助成金は、単に資金面での支援を行うだけでなく、中小企業が抱える労働環境の課題解決と、デジタル化による業務効率化を促進する重要な制度といえます。働き方改革は一朝一夕には完成しませんが、適切な支援を受けながら着実に進めることで、必ず企業の競争力強化につながる重要な投資となると考えます。
働き方改革推進支援助成金のご相談なら
当事務所では、働き方改革推進支援助成金の申請書作成支援・提出代行を行っております。「うちでも申請できるのかな?」「どんな準備が必要なんだろう?」など、気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
働き方改革推進支援助成金を活用したいとお考えの方は、ぜひ一度、当事務所までご連絡ください。お力になれるよう、しっかりとサポートいたします。
働き方改革推進支援助成金の申請サポート地域
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