
中小企業が新事業に進出する際に利用できる補助金として、令和7年度より新しく始まった「中小企業新事業進出補助金」。補助対象事業の要件のひとつに「ワークライフバランス要件」があります。これは「両立支援のひろば」のサイトに一般事業主行動計画を公開することが必要なのですが、そもそも「両立支援のひろば」とはどのようなサイトなのでしょうか。
新事業進出補助金とは
中小企業新事業進出補助金とは、中小企業がこれまでとは異なる分野へ新たに挑戦する際に、設備投資や市場開拓などにかかる費用を国が支援する制度です。
たとえば既存事業のノウハウを活かして新しい事業に進出する、または新しいサービスを立ち上げたりする等の場合に、その初期投資の一部を補助してくれるため、リスクを抑えながら事業の幅を広げることができます。
両立支援のひろばとは
両立支援のひろば」は、厚生労働省が運営する情報公開・支援サイトで、企業における“仕事と家庭の両立支援”に関する取組状況を公表・検索できる仕組みです。
育児や介護と仕事の両立に向けた制度整備を進める企業が、自主的に策定した「一般事業主行動計画」や、育児休業取得率といったデータを公開する場として位置づけられています。
新事業進出補助金のワークバランス要件では、両立支援のひろばに申請締切日時点で有効な一般事業主行動計画を公表することが求められています。
一般事業主行動計画とは
一般事業主行動計画とは、事業主が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、①計画期間②目標③目標を達成するための対策の内容と実施時期を具体的に盛り込み策定するものとなります。
なお、従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。
なお、一般事業主行動計画には、「次世代法(次世代育成支援対策推進法)」に基づくものと、「女性活躍推進法」に基づくものの2種類があります。新事業進出補助金等の要件となっているのは、「次世代法に基づく行動計画」です。
| 法律 | 目的 | 一般事業主行動計画の概要 |
|---|---|---|
| 次世代育成支援対策推進法 | 次世代の子どもが健やかに生まれ育つ環境を整備し、仕事と育児を両立できる雇用環境を企業が支援すること | ・仕事と子育ての両立支援に関する雇用環境の整備 ・子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備 |
| 女性活躍推進法 | 女性が職業生活で希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備すること | ・女性の活躍状況の把握と課題の分析 ・課題を踏まえた数値目標・取組内容の設定 ・女性活躍に関する自社の数値データの公表 |
一般事業主行動計画を策定し、その行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の要件を満たした場合、くるみん認定・トライくるみん認定なども申請することができるようになります。
くるみん認定は新事業進出補助金の加点項目となっています。加点があれば採択率も有利となりますので、申請するなら是非認定を検討したいところです。なお、くるみん認定は新事業進出補助金はだけではなく、ものづくり補助金などの補助金制度でも加点項目となっています。また補助金だけではなく、くるみんの認定マークを商品、広告、求人広告などに付けることができ、子育てサポート企業であることをPRできます。

中小企業新事業進出補助金の申請で両立支援のひろばの公表
中小企業新事業進出補助金では、ワークライフバランスに関する要件として「両立支援のひろば」で一般事業主行動計画を公表することが求められています。
また、この動きは他の補助金制度でも広がっており、中小企業省力化投資補助金(一般型)やものづくり補助金では、公表が申請要件として位置づけられています。さらに、小規模事業者持続化補助金においても、一般事業主行動計画の策定・公表が加点対象となり、採択率向上に寄与する重要な評価項目として扱われています。
まとめ
以上、中小企業新事業進出の注目されている「両立支援のひろば」についての解説でした。
一般事業主行動計画の公表は、新事業進出補助金の申請要件を満たすためだけの手続きではありません。企業としての信頼性向上やブランド価値の強化、人事制度の見直し・改善を進める契機としても高い効果が期待できます。
補助金活用にとどまらず、企業イメージの向上や人的資本への投資という観点からも、積極的な公表をぜひご検討ください。
一般事業主行動計画を両立支援のひろばに掲載する場合、1~2週程度の期間を要します。新事業進出補助金の締め切り期間間近になると更に日数がかかることも想定されますので、新事業進出補助金の申請を検討されている場合は早めに取り組まれることをお勧めします。
