経営・管理ビザの要件が厳格化へ

新型コロナ禍を経て、わが国における外国人労働者数は着実に増加しており、それに伴って外国人が日本で事業を立ち上げ、経営に携わるケースも年々増加傾向にあります。
こうした外国人経営者の存在は、新たな市場機会の創出や国際的なビジネスネットワークの形成など、日本経済にとって大きなプラスの効果をもたらす一方、事業の実体性に乏しい事例や適正な雇用管理が行われていないケースも指摘されています。
このような状況を踏まえ、政府は外国人が取得する在留資格「経営・管理」(いわゆる経営ビザ)について、その要件を一層厳格化する方向性を打ち出しています。

目次

「経営・管理」ビザとは

「経営・管理」とは、外国人が日本で事業の経営や管理に従事するための在留資格を指し、一般には「経営ビザ」と呼ばれています。
この在留資格により、外国人は株式会社や合同会社などの法人を設立して代表取締役として経営にあたったり、既存の企業の経営管理に携わったりすることが可能となります。
取得には、安定性・継続性のある事業であることが前提条件とされており、様々な要件が定められているものの、経営の実態が不明瞭なケースも散見されているとの意見もありました。

改正案の比較

それでは、今回の改正で経営管理ビザの要件はどのように厳格化されるのでしょうか。
以下の表をご確認ください。

要件区分現行改正案
資本金・出資金500万円以上3,000万円以上
常勤雇用常勤2名以上の日本人等を雇用
(出資500万円があれば不要)
出資額にかかわらず、常勤職員1名以上の雇用を義務化
経営者の学歴・経験学歴要件なし経営・管理分野の修士号または3年以上の経営経験が必要
事業計画事業計画書を作成第三者(中小企業診断士など)による確認が必要

改正案において資本金要件を3,000万円とすることにより、形式的な会社設立やビザ取得のみを目的とした事業の抑制につながり、一定程度の不正防止効果が期待できると考えられます。
特に、十分な資本金を有することは事業の継続性や健全性の担保にも直結するため、真に日本で事業を展開しようとする外国人経営者と、制度を悪用しようとする者との峻別に寄与すると思います。
なお、改正は2025年10月頃となるようです。

まとめ

改正はまだ案の段階のため、実際にどのような改正が実施されるかは分かりませんが、「経営・管理ビザ」を取得するための資本金や事務所確保などの要件が厳格化される方向であると考えられます。
各国の制度を比較してみても、日本は一定の資本金要件や事業実態の明確化を重視しており、今後さらに適正な企業運営を求める流れが強まると考えられ、これから日本での起業を検討する外国人の方は、制度改正の動向を注視し、入念な事業計画の準備と専門家への相談が重要になるでしょう。

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