退職時に会社のデータを削除されたら

従業員の退職に際しては、業務引継ぎや契約関係の整理に加え、様々なトラブルが発生する可能性があります。特に、退職理由に会社への不満や対立が伴う場合、そのリスクは一層高まります。仮に退職者が意図的に社内データを削除した場合、企業としてはどのような法的手段や実務対応を講じることができるのでしょうか。

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退職時にファイル削除した従業員に賠償命令が出された事案

これは、令和7年1月に徳島地裁で出された判決で、元従業員が退職日にサーバー上の電子ファイルを削除するプログラムをあらかじめ設定し、自動的にデータを消失させた事案があります。
この行為に対して、会社(原告)は元従業員及びその身元保証人に対して、約2,580万円の損害賠償を請求しました。

元従業員が行ったこと

退職することとなった元従業員は最終出社日に、会社の共有サーバ内のファイルと自身を削除するプログラムを作成し、退職日に共有PC内のファイル232個を一括削除しました。

裁判所の判断

裁判所では、会社の共有サーバに保存された業務ファイルは、会社の業務遂行に資する法律上保護される利益とし、本人同意なくこれを消滅させた行為は会社の利益を侵害する不法行為(またはデータ保存義務違反)に当たると判断されました。
最終的に約577万円の損害賠償を支持(請求額の約22%)し、身元保証人にも連帯責任が認められました。

まとめ

近年、従業員が退職時に業務データを削除したり、その他の業務妨害行為に及ぶ事案についてご相談をいただくことがあります。
こうした事態は、当事者双方の主張や背景事情が複雑に絡むため、一概にどちらが全面的に非があると断定することは困難です。しかしながら、円満な退職を実現するためには、日常的な職場内のコミュニケーションや業務管理の在り方に留意し、信頼関係を維持することが不可欠です。

なお、従業員側においては、退職時に故意にデータを削除するなど会社の業務資産を毀損する行為は、不法行為として損害賠償請求の対象となり得るため、重大な法的リスクを伴うことを十分認識する必要があります。

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