こんにちは、SKY労務・行政書士事務所です。
会計監査員がIT導入補助金に対する実地検査を行ったところ、1億円を超える不正受給が確認されたことが公表されました。採択率が高く、利用しやすい補助金制度であったIT導入補助金ですが、今後は制度が変わるかもしれません。
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
対象となるITツール(ソフトウェア、サービス等)は事前に事務局の審査を受け、補助金HPに公開(登録)されているものとなります。
申請枠
2024年度のIT導入補助金には、以下の申請枠があります。
- 1.通常枠
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自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートする制度です。
- 2.インボイス枠(インボイス対応類型)
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会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト、PC・ハードウェア等の経費の一部が補助対象となり、インボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化を推進することが目的とされた制度です。
- 3.インボイス枠(電子取引類型)
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取引関係における発注者が、インボイス制度対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、当該取引関係における受注者に対して無償でアカウントを供与して利用させる場合に、その導入費用の一部が補助されます。
- 4.複数社連携IT導入枠
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複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツール及びハードウェアを導入することにより、地域DXの実現や、生産性の向上を図る取り組みに対して、複数社へのITツールの導入を支援するとともに、効果的に連携するためのコーディネート費や取り組みへの助言を行う外部専門家に係る謝金等を含めて支援される制度です。
- 5.セキュリティ対策推進枠
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サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスク低減を目的とした制度です。
主な特徴
IT導入補助金の主な特徴は下記となります。
・対象となるITツール: 事前に事務局の審査を受けたITツールが対象となります。
・申請枠補助率: 通常枠では費用の1/2以内、インボイス枠では1/2~4/5以内が補助されます。
・インボイス枠(インボイス対応類型)では、ソフトウェアに加え、パソコンやタブレットも補助対象となります。
・複数社連携IT導入枠の補助額の上限は3,000万円です。
会計検査院の検査の結果
会計監査院の検査の結果は下記となります。
〇 376事業主体が実施した445事業(令和2~4年度)に対する実地検査により、30事業主体の41事業(補助金交付額計1億0812万円)で実質的還元等による不正が行われ、IT導入補助金が過大に交付。これに関与したIT導入支援事業者(不適正ベンダー)15者が支援した事業は、41事業を含め1,978事業(同58億2891万円)。さらに、上記15者のうち12者を含む27者が支援する67事業主体の88事業(同2億5352万円)で、実質的還元と同様の資金の流れなどが判明
〇 機構やサ推協は、相当数の不正の疑義を把握していたが、不正の疑義のあるIT導入支援事業者、事業主体への立入調査を一度も実施せず、不正によるIT導入支援事業者の登録取消しは一切行われず。
〇 101事業主体の114事業でITツールを解約していたのに提出が必要な辞退届が未提出。うち79事業主体の92事業(同2億3301万円)でITツールの継続的な利用を宣誓した上で事業の効果報告。解約状況の把握の仕組みが不十分✓ 255事業主体の271事業(同6億7224万円)で、効果報告等に当たり生産性関連情報等の数値を誤って報告 等
不正の具体例は、「ITツールの購入額の払い戻し」及び「ポイント・クーポン等による還元」が行われていたようです。申請者が市場価格よりも高額なシステムを導入し、ベンダーなどの導入支援事業者がポイントなどの名目で申請者にキックバックしていたということです。
さらに、独立行政法人中小企業基盤整備機構や補助事業者である一般社団法人サービスデザイン推進協議会も不正の疑義を把握していたにも関わらず、立入検査等も一切行われていなかったようです。
また、IT導入補助金を利用して導入したITツールは処分制限期間内に解約すると、補助金の辞退届の提出が必要ですが、辞退届が提出されていなかったケースがありました。