こんにちは!SKY労務事務所です。
介護施設や会社の警備など夜勤がある業務で仮眠時間を設けている企業は多いと思います。
それでは、業務中の仮眠時間は休憩時間になるのでしょうか。
今回は夜勤中の仮眠時間の取扱いについて解説します。
裁判例
過去にも休憩時間が労働時間にあたるのか裁判で争われたことがあります。
その中でも特に有名な大星ビル管理事件の判例が参考になると思います。
事件概要
ビル管理会社の従業員Xは、ビル設備の運転操作、監視、ビル内巡回監視等の業務を行っており、毎月数回、午前9時から翌朝9時までの24時間勤務がありました。
業務では、仮眠室において警報が鳴る等が起きない限り、睡眠をとることが認められていました。また、24時間勤務に対しては泊まり勤務手当が支給され、さらに突発的な作業が発生した場合は、その時間に対して時間外手当及び深夜手当が支給されていました。
Xは仮眠時間を労働時間として扱わなかったことを不服として、ビル管理会社に対して、すべて労働時間に該当するとして、時間外手当・深夜終業手当を請求しました。
裁判要旨
裁判所は、本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たると認めました。
要旨としては下記となります。
1 労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって,労働基準法32条の労働時間に当たる。
2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間は,従業員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられており,そのような対応をすることが皆無に等しいなど実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないなど判示の事実関係の下においては,実作業に従事していない時間も含め全体として従業員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり,労働基準法32条の労働時間に当たる。
この判決のポイント
この判決のポイントは「労働者は使用者の指揮命令下に置かれている」ということです。
従業員は仮眠時間中であっても、急な設備のトラブルなどの出来事等があれば対応する必要があるため、労働者の自由な時間ではありません。このように何かあれば対応しなければならない状況であれば、従業員は使用者の指揮命令下に置かれているとみなされ、休憩している時間であっても労働時間とされます。
今回のように、会社の規定として休憩時間を設けていても突発的な業務の発生が予想される場合は、労働時間とみなされる可能性があります。
会社としては休憩時間中に従業員が指揮命令下に置かれていないか、もし従業員が休憩時間中に業務が発生する場合は賃金規定等の見直しが必要なのか検討が必要です。